ヴィーガンドッグフードは犬の健康にいい?悪い?

 

近年、「人間は動物の搾取なしで生きるべきである」とする主義のヴィーガニズムが広まっています。

ヴィーガン協会の調査によると、イギリスのヴィーガンの数は2014年から2019年の間に4倍に増加したそうです。(Loeb, J. 2020)

同時に、この植物性食品しか食べないヴィーガンをペットにも求める飼い主が増えています。

 

しかし、犬は肉食動物であり、消化プロセスで食べ物を発酵させる必要がないため、消化器官が短く発達していません。(Yoshimura, H.2021)

また、植物は肉食動物が消化しにくい炭水化物が豊富で、必須アミノ酸が少なく、すべての必須ビタミンが含まれているわけではありません。(Che, D.2021)

さらに、植物には草食動物の胃腸管だけが解毒できる有毒な化合物が含まれている可能性もあります。

 

一見、ヴィーガンは犬の健康に悪影響を及ぼしそうな気がしますが、実際にはどうなのでしょうか?

今回は、その答えとなるレビュー論文を紹介します。

※「レビュー論文」とは、過去に公表された複数の研究結果をまとめたエビデンスレベルが高い論文。

 

ヴィーガンドッグフードが犬の健康に大きな悪影響を与える証拠はない

 

ヴィーガンドッグフードが犬に推奨できるかどうかについては、多くの討論が繰り広げられています。(Dodd, S.A.S.2021)

 

犬の栄養に関するアメリカ国家研究評議会の勧告(Knight, A.2016 / Baldwin, K.2010,)によると、ヴィーガンドッグフードの問題は、①タンパク質不足、②バランスの悪い脂質、③栄養不足、の3つだと報告されました。(Brown, W.2009)

たとえば、栄養バランスのとれていないヴィーガンドッグフードを食べる犬は、貧血を発症し、赤血球ヘモグロビンレベルの著しい低下を引き起こす可能性があります。(Yamada, T.1987)

 

しかし一方、ヴィーガンドッグフードは、いくつかの尿路疾患(Brown, W.2003)や食物タンパク質によって引き起こされるアレルギー(Chan, S.K.2018,)など特定の病気の治療に有益であることも示されています。

 

このような背景から、ヴィーガンドッグフードが犬の健康に与える影響について、これまでの論文をまとめて解析するレビューが行われました。

メトロポリタン自治大学のAdriana Domínguez-Olivaらは、1992年から2022年までに発表された16の研究を解析。

 

その結果、「ヴィーガンドッグフードが犬の健康に大きな悪影響を与える証拠はない」という結論に至りました。

 

ヴィーガンドッグフード与えるなら市販のフードがおすすめ

 

このレビュー論文の問題点は、研究自体が少なく、利用可能な研究ではサンプルサイズが小さいか、給餌期間が短いことでした。

また、これらのデータの多くは飼い主へのアンケート調査だったため、選択バイアスや結果に関する主観性の影響を受ける可能性があります。

ただし、これらはいくつかの研究で比較的一貫していることも事実です。

 

今後、タウリンや葉酸などヴィーガンドッグフードにおいて懸念される側面に焦点を当てた大規模な研究が必要になります。

現時点で犬にヴィーガンドッグフードを与えたいと考えている飼い主さんは、手作りフードでは栄養バランスをとるのが難しいので、市販のヴィーガンドッグフードを与えることをおすすめします。

 

 

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参考文献

Veterinary Sciences | Free Full-Text | The Impact of Vegan Diets on Indicators of Health in Dogs and Cats: A Systematic Review (mdpi.com)

Loeb, J. The trouble with vegan cats and dogs. Vet. Rec. 2020, 186, 197

Yoshimura, H.; Hirata, S.; Kinoshita, K. Plant-eating carnivores: Multispecies analysis on factors influencing the frequency of plant occurrence in obligate carnivores. Ecol. Evol. 2021, 11, 10968–10983.

Che, D.; Nyingwa, P.S.; Ralinala, K.M.; Maswanganye, G.M.T.; Wu, G. Amino Acids in the Nutrition, Metabolism, and Health of Domestic Cats. Adv. Exp. Med. Biol. 2021, 1285, 217–231.

Dodd, S.A.S.; Shoveller, A.K.; Fascetti, A.J.; Yu, Z.Z.; Ma, D.W.L.; Verbrugghe, A. A Comparison of Key Essential Nutrients in Commercial Plant-Based Pet Foods Sold in Canada to American and European Canine and Feline Dietary Recommendations. Animals 2021, 11, 2348.

Knight, A.; Leitsberger, M. Vegetarian versus Meat-Based Diets for Companion Animals. Animals 2016, 6, 57.

Baldwin, K.; Bartges, J.; Buffington, T.; Freeman, L.M.; Grabow, M.; Legred, J.; Ostwald, D., Jr. AAHA nutritional assessment guidelines for dogs and cats. J. Am. Anim. Hosp. Assoc. 2010, 46, 285–296.

Brown, W. Nutritional and ethical issues regarding vegetarianism in the domestic dog. Recent Adv. Anim. Nutr. Aust. 2009, 17, 137–143.

Yamada, T.; Tohori, M.; Ashida, T.; Kajiwara, N.; Yoshimura, H. Comparison of effects of vegetable protein diet and animal protein diet on the initiation of anemia during vigorous physical training (sports anemia) in dogs and rats. J. Nutr. Sci. Vitaminol. 1987, 33, 129–149.

Brown, W.; Vanselow, B.; Walkden, S.; Brown. One dog’s meat is another dog’s poison–nutrition in the Dalmatian dog. Recent Adv. Anim. Nutr. Aust. 2003, 14, 123–132.

Chan, S.K.; Leung, D.Y.M. Dog and Cat Allergies: Current State of Diagnostic Approaches and Challenges. Allergy Asthma Immunol. Res. 2018, 10, 97–105.

 

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